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キレたくなるけど、我が盟友、新太くんの声は真面目だ。なのでこっちも、次はゆめかわコーデで来てやろうと決めて溜飲を下げる。今は、目の前のミッションが最優先だろう。
「で、どうすればいい?」
電話の向こうで、新太が少し黙った。やがて、やっと指令が下る。
『とりあえず……踊れ』
「はあ!?」
思わず叫んだ。電話が切れた。ツーツー。通話終了。仕方ない。俺は腹に力を入れ、足を踏ん張る。
休日のショッピングモール、その中のフードコートである。すぐ隣に目を遣れば、席の取り合いが起きているような、それほどに混みあったこの場所は吹き抜けになっていて、上階からもよく見える。どこよりも人の眼に晒されていると言っていい。その、無数の無意識的視線をすべて奪うつもりで、声をあげる。
「レディースエーンジェントルメーン、ボーイズエンガールズ!今からこの俺、信道優輝が、」
踊ります!そう続けようとして、視界の隅にドラマを見つけた。
突然奇行をとった俺を見て足を止めた人々の中にある、いけすかない澄まし顔、×《かける》3。まさしく今日のターゲットであるその女子どもに、駆け寄っていく俺のパーティ。
なんだよ、陽動作戦だったなら、もっと派手な服着てくればよかった。
「―――やっぱり踊りません!」
無事捕獲したらしいターゲットの横で、新太がサムズアップの仕草をした。
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