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「え、えっと、とりあえず、私達のみどるねーむはこれで決まりとして」
「ミドルネームじゃなくて二つ名ね」
「フタツナはこれで決まりとして、どうします?」
彼女はそう言って、真っ白な画用紙を指差した。
…………。
沈黙。新太が腕を組む。この一週間で見慣れてしまった新太の渋面は、目の前のラーメンに似合わない。
「澄心ちゃん、絵とか描けないかな?」
「ごめんなさい……」
「優輝は?」
「無理」
「オレも……、無理なんだよなあ」
ふうむ。溜め息が出ちゃうって奴だ。ポスターを作ろうと考えたは良いが、パーティに絵師が居ないだなんて。せっかく見栄えのしそうな二つ名まで考えたってのに。
「やっぱり、とりあえずはこのまま、地道に署名を集めるしかないな」
今日の戦利品は、澄心が不用心に開いたままの大袈裟なカバンに入っている。持ち主の許可なくカバンに手を突っ込んでそれを取り出し、テーブルに置こうとしたところで、新太が俺の手から書類を拾って、クリアファイルの上に載せる。そっか、テーブル、汚いもんな。これは、俺たちに今ある唯一の命綱。慎重になるのが当然だった。
『私たちは制服の男女兼用化に賛成します』
A4のペラい紙三枚に、今しがた貰ったばかりの三人分の署名と宣誓。
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