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「私は断然総悟くん!」
美依が叫ぶ。
総悟くんとは、沖田総司の生まれ変わりという設定のキャラクターだ。
美依はこのキャラクターを攻略するためだけに『おれスタ』を購入したと言っていた。
好きなゲームの話をされ堪えきれなかったのだろう。
「総悟くん?ああ~。総悟くんの優しさにも癒されるよね」
岬さんの言葉に美依が大きく頷いた。
同士を見つけた時のように目を輝かせている。
「私は……広臣様以外あり得ないわ」
あのダンディで渋い所が最高!と佑が溜息交じりに呟く。
「えっ?広臣さんって理事長だよね?攻略対象なの?」
岬さんが驚いた声を上げる。
「そうなの。でも紳士だからヒロインが卒業するまで待つって言ってくれるの」
「そうなんだ。知らなかった~」
「みんな詳しいんだね」と岬さんが微笑む。
その笑顔に、思ってしまった。
彼女なら私たちのオタク趣味を馬鹿にしないのではないかと。
「最近このゲームやり始めたんだけど凄く面白くてキュンキュンしてハマっちゃったんだ。でも周りにやってる子いなくて、その上そういうのやってるのはキモいって言われちゃって……」
「オタクってキモいよな」
そんな言葉を聞く度、自分がおかしいの人間なのだと、オタクということは隠さなくてはいけないと思っていた。
岬さんでも「キモい」と言われるなんて、よっぽど気持ち悪いことなのかもしれない。
「だから私ほっといてっていったの。自分が好きでやってるんだから別にキモいって思われてもいいし。分かって欲しいとも思わないしね」
「あ。でもレン様のカッコ良さは分かって欲しいかも~」と笑う岬さんの両手をガッチリと握りたくなった。
「わ、私も!レン様がいかにカッコいいか知って欲しい!」
私はキモくてもいい。
でもレン様は、優しくてカッコいいんだって言いたい。
興奮して机を叩いてしまった。手がヒリヒリとしている。
恥ずかしいことを叫んでしまった。でも彼女は「嬉しい。仲間だね」と笑ってくれた。
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