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昼休みの食堂は人でごった返している。薫は人混みを器用に避けながら、一番隅の席にうどんの載ったトレーを置いて腰掛けた。 隣の席には4人組の女子グループがいた。4人ともきっちり化粧をしており、お洒落な印象を受ける。 聞き耳をたてるつもりはないのだが、薫の耳に会話が入ってくる。 「ねえ、テスト期間終わったら、花火大会みんなで行かない? 大学から近いところでやってるし!」 「私とミカはいいけど、シオンは多分かれぴっぴと行くんじゃない?」 「えっ、わたしもみんなと一緒に行くよ! 彼氏とは別のとこでやってる花火大会行く予定だから」 「……さらっとノロケられた……」 薫は何の気なしにその会話を聞いていたが、花火大会、という言葉に心が動いた。 幼い頃、母親に花火大会に連れて行ってもらったことがある。出店にはさほど心が動かなかったが、花火の音と光に感動したことだけは覚えていた。 (花火大会か、近くでやってるなら行ってみたいかも知れない。でも一人で行くのはちょっと気がひける) ふと、絵莉子の顔が頭に浮かんだ。 (……誘ってみようか?)
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