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テスト期間も終わりが近づき、薫がやり残した課題もレポート一本となった。 図書館は学生たちで混み合っている。薫はなんとか空いている席を見つけ、荷物を机に置いて腰を下ろした。 薫はレポート課題について書いてあるプリントを出そうと、鞄を探った。確かファイルに入れていたはずだ。 しかし、ファイルを開いても授業のレジュメが入っているのみで、課題についてのプリントは見当たらなかった。 (ここにいれた筈だけど、もしかして手帳に挟んだとか?) しかし、手帳を開いても目当てのものは見つからない。薫は仕方なく荷物をまとめ、部屋を探すことにした。 「ここもない……」 部屋中をひっくり返す勢いで探したが、プリントは見つからない。薫は深い溜息をついた。 (プリントを探すのを諦めて、新しいのをもらった方が良い? でも、非常勤の先生で授業人数も多かったし、わざわざメールとかで問い合わせるのも気がひける) しばらく頭を悩ませていると、ガチャリと扉が開く音がした。 「ただいまー! ……なんか大変そうだけど、どうしたの」 絵莉子は散らかった部屋を見て、一瞬呆気にとられた。 「なんでもない、すぐに片付けるから」 「なんでもないことないよ、すごく困った顔してる」 指摘され、薫は思わず目を落とした。 「……プリントを、なくしただけ。課題について書いてあるのを」 「そっか。私のところにも混じってないか見てみるよ」 絵莉子は自分の荷物や机の周りを探し始める。薫は面目ない気持ちでそれを見ながら、散らかしてしまった部屋を片付けた。
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