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しばらく屋台を巡っていると、花火の炸裂音が鳴り響いた。
「あっ、始まったみたい」
辺り一帯は人で溢れかえっていて、立ち止まって見る余裕はなさそうだ。
「人が少なそうなところで、座って見ない?」
「そうだね。ちょっと移動しようか」
絵莉子は薫の提案を受け入れ、二人はなんとか人混みを抜け出した。しかし、今度は建物の影に隠れて見えない。
「あっちに行ったほうが見えるかな?」
花火がよく見える場所を探して二人で駆け回っている間にも、炸裂音は聞こえてくる。
「あ、この辺まで来るとちょっと見えてきたよ!」
小さな花火はいまだに建物の影に隠れており、見えにくかったが、ほかははっきりと見えた。まばらではあるが見物客も道端に腰を下ろしている。薫と絵莉子も車が来なさそうな場所に座った。
二人が腰を落ち着けた瞬間、また新たな花火があがる。
「ハートの花火だ!」
絵莉子がはしゃいだ声を上げる。
「本当だ。きれい」
二人の目に鮮やかな光の粒が映る。やはりところどころ見えにくい時もあったが、薫には微かな光でも美しく感じた。
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