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絵莉子は、自分よりも遥かに広い世界を生きている。薫は近頃そう感じていた。絵莉子を必要とする人は、自分の他にもきっと沢山いるのだ。 (それなのに、あの時どうして、私のことを「大好き」と言ってくれたのだろう…私は、今でもその言葉の意味を確かめられていない) 二人の関係は曖昧なままであった。友達と言うには近すぎる。しかし恋人と言うには、二人はそれらしい約束をしていない。 その週の日曜日、絵莉子は珍しく何も予定がなく、部屋の中で寛いでいた。久し振りに二人で過ごす休日であった。 もう春だというのにまだ片付けることができていないコタツの中で、絵莉子は横になっている。 「こんなにゆっくりできるの久し振りだよ、幸せ…出たくない」 絵莉子の綻んだ顔を見て、薫も思わず微笑んだ。 「最近忙しかったもんね。新入生は入りそう?」 「んー、ぼちぼちかなぁ…あ、そういえばね、…」 絵莉子が授業やサークルなどであったことを話すのを、薫はうなづきながら聞いていた。 薫は絵莉子と他愛のない話をする時間が好きだった。絵莉子といる時だけは、自分も少し口数が増える気がする。 しかし、色々な話をしても、肝心なことはいつも聞けないままであった。 (絵莉子ちゃんと私は、ただの友達? それとも…)
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