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「ちょっと、大丈夫ーー」 薫が尋ねようとすると、絵莉子は薫の首に抱きついてきた。薫は思わず「ぐっ」とくぐもった声をあげた。 「だいじょうぶー、酔ってないよぉ」 「…そう」 薫は溜息をついた。これを「酔っている」と言わずして、なんと言えばいいのだろうか。 薫は絵莉子を引き剥がし、ローテーブルの前に座らせた。それから水をコップに注ぎ、絵莉子に渡した。 「はい、飲んで。飲んだらシャワー浴びて早く寝て」 「えー、やだなー、シャワー浴びるのめんどくさいー」 そう言うと、絵莉子は薫の腰に抱きついた。絵莉子の髪からはふわりとシャンプーの香りがする。 (ちょっとめんどくさいな…でも、それだけ楽しく飲んできたんだね) 薫は絵莉子の髪に手を伸ばそうとした。しかし、薫の脳裏に、先程ドアの前で見た光景がよぎる。 酔った絵莉子は、同じサークルの誰かに支えられながらここに来た。きっと、こんな無防備な姿を見せるのは、薫だけではないのだろう。 心に棘が刺さったようにちくりと痛む。絵莉子が誰とかかわろうと自由であるはずなのに、嫌でたまらない。 絵莉子は相変わらず自分の腰にしがみついている。 (…教えて、あの時私のことを特別だと言ってくれたのは、どういう意味だったの?) 薫は、以前絵莉子が話していたことを思い返す。 『私ね、なんでかわからないけど、いつも好きになるのは女の子ばかりなんだ。ずっと隠してきたんだ。友達にも、家族にも、ずっと』 絵莉子はそう言っていた。そして、自分は「女の子」とは言えない。ならば絵莉子にとって自分とは何なのだろうか。 そして、自分が絵莉子に抱く、友達以上の気持ちも一体なんなのだろうか。 (聞きたいことはたくさんあるけど、でも、今はまだ) しがみつく絵莉子を見下ろすと、かすかに寝息を立てていた。薫は絵莉子を起こさないようにそっとベッドに運んだ。 絵莉子がいつも寝ているところは、二段ベッドの上だ。そこまで運ぶことはできないため、薫の寝場所である二段ベッドの下に寝かせることとなる。 絵莉子を寝かせて一息ついた後、薫はあっと一声をあげた。 (プレゼント…渡すの忘れてた)
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