11月26日木曜日(兄) 2年目

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「……明日も会社だし、また出直してくるわ」  蒼大は若干胸を押えながら、母親に告げた。 「はい、これ」 「どうしたの?」 「お祝いのケーキ。大介が帰ったら食べさせてやって」 「大ちゃん、出掛けてて良かったわ」  フフフ、と母親は愉快そうに笑いだした。 「何でそんな事いうんだよ。俺本当に会いたかったのに」 「だって、あの子……甘い物苦手だから。忘れてた? うっかり? もし居たら、大好きなお兄ちゃんのプレゼントだから、黙って一生懸命無理して食べちゃうわ」 「……あ!! そうだった!!」  盛大にミスったショックで膝をついた蒼大の手から、母親はケーキの箱を取った。 「蒼ちゃんありがとう。ちゃんと大ちゃんには『お兄ちゃんがお祝いにきてくれた』って伝えておくわよ。 ケーキは母さんが喜んで戴くわ。丁度久しぶりに解禁の日に、いいタイミングだわ~」 「 久しぶり? 解禁? ダイエットでもしてたの?」  ケーキの箱を見てきゃっきゃと喜んでいる母親を見て、少し落ちた気持ちが救われた蒼大が、様子を見て疑問を投げかける。 「大ちゃんが合格するようにって、母さん何も出来ないけど、好きな甘い物断ちして願掛けしてたの。願い叶ったから、今日から解禁。 そういえば、お友達も何か願掛けしてくれてるって大ちゃん言ってたわ」 「そうなんだ……よかったな……」 (俺、何もしてない。そんな事、思いもつかなかった……)  蒼大は辛うじて愛想笑いを浮かべた。
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