11月26日木曜日(兄) 2年目

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「蒼ちゃん、」  三度改めて名を呼ばれ、蒼大はビクつき背筋を伸ばす。 「大ちゃんは、昔から何されても無条件にお兄ちゃん大好きな子だけど……蒼ちゃんが、大ちゃんを可愛がってくれるようになって、母さん、本当に嬉しいわ。兄弟仲良くて、弟の事良く想ってくれて」 「当たり前だろ、たった一人の弟なのに」  蒼大は声を張って告げた。昔とは違う。  今は本当に大切に思っている。過度なほど。 「大事に思うなら、ずっと思い続けてやってね。……何があっても。 自分の都合が良い時だけ、自分の気持ちだけで可愛がって、思い通りにならないとまたそっぽ……なんて事したら…… そんな人間には、犬も懐かないわよ」  グッサリ  帰ろうとした最後に、何故だか解らないけれど、一番堪えた一撃を頂いた。  決してそんな事しない! と言い返せる。  けれど、正直な所蒼大自身そういう一面がある事も自覚している。  やはり母親なのか、本質を全て見透かされてるようで…… 「お母様、ケーキ召し上がってください。また、結婚式の打ち合わせでも、寄ります。親父に伝えといてください。 大介に、おめでとうと……よろしく。では、おやすみなさい……」  無意識に、普段のとんちんかんな天然母には決して使わない敬語で、別れの挨拶をしていた。 「何? どうしたの? 変な子ね」  もうケーキを頬張っていた母親は、笑いながら手を振ってくれた。 「じゃあな、リュウ、」  蒼大は玄関で寝ているリュウの頭を撫でようとしたら……  ワンワンワンワンワンワン!!!! 「ゥワッ!!」  寝てるふりでもしてたのか、めっちゃ吠えられた。 (気まぐれに自分本位で愛情注いだって、犬も懐かない……) 「肝に銘じます……」  蒼大は夜空を見上げ、実家を後にした。 -おしまい- 母、つえぇぇの巻
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