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「蒼ちゃん、」
三度改めて名を呼ばれ、蒼大はビクつき背筋を伸ばす。
「大ちゃんは、昔から何されても無条件にお兄ちゃん大好きな子だけど……蒼ちゃんが、大ちゃんを可愛がってくれるようになって、母さん、本当に嬉しいわ。兄弟仲良くて、弟の事良く想ってくれて」
「当たり前だろ、たった一人の弟なのに」
蒼大は声を張って告げた。昔とは違う。
今は本当に大切に思っている。過度なほど。
「大事に思うなら、ずっと思い続けてやってね。……何があっても。
自分の都合が良い時だけ、自分の気持ちだけで可愛がって、思い通りにならないとまたそっぽ……なんて事したら……
そんな人間には、犬も懐かないわよ」
グッサリ
帰ろうとした最後に、何故だか解らないけれど、一番堪えた一撃を頂いた。
決してそんな事しない! と言い返せる。
けれど、正直な所蒼大自身そういう一面がある事も自覚している。
やはり母親なのか、本質を全て見透かされてるようで……
「お母様、ケーキ召し上がってください。また、結婚式の打ち合わせでも、寄ります。親父に伝えといてください。
大介に、おめでとうと……よろしく。では、おやすみなさい……」
無意識に、普段のとんちんかんな天然母には決して使わない敬語で、別れの挨拶をしていた。
「何? どうしたの? 変な子ね」
もうケーキを頬張っていた母親は、笑いながら手を振ってくれた。
「じゃあな、リュウ、」
蒼大は玄関で寝ているリュウの頭を撫でようとしたら……
ワンワンワンワンワンワン!!!!
「ゥワッ!!」
寝てるふりでもしてたのか、めっちゃ吠えられた。
(気まぐれに自分本位で愛情注いだって、犬も懐かない……)
「肝に銘じます……」
蒼大は夜空を見上げ、実家を後にした。
-おしまい-
母、つえぇぇの巻
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