yesterday.

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そろそろ冬至の日だった。一年で一番昼が短い日。寒い。身体が千切れてしまうかのような寒さだ。しかし僕はその寒さが、冬が好きだった。 寒さというのは暖かい格好をしていると幾分和らぐ。それに比べ暑さというのはいくら薄着をしても、例え裸になったとしても、陽射しは容赦なく僕の体力を奪い続ける。仕事で外回りを担当している僕としてはシャツが汗でひっついてしまうし、真夏の満員電車など地獄のようなものだ。 冬は雪が降る。雪は好きだ。綺麗な物はより綺麗に、汚い物には白いカーテンをかけてくれる。それは僕の心の中にまで降っているように感じた。見たくないもの、聞きたくない言葉、知りたくなかった感情、その全てに白く、白く、降り積っていく。そして忘れてしまう。自分の中の大切なもの、かつて思い描いていた夢さえも。     
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