つまり最初から

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 クリスマスイブ暇だから、一緒に過ごさない?と最初に持ちかけて来たのは治也だった。  それはつまりなんだ、愛の告白の一種なのか。まさかと思いつつもちょっと気合い入れた恰好で昼の12時、ツリーの前にて待っていたけれども、治也はなかなか現れない。そしてさすがにそろそろ連絡しようかと思った12時半、ようやく治也は、なんの悪びれもなく、しかもなぜか肉まんを持って現れたのだった。 「あれ?なに、今日可愛いね。どうしたの?」  …第一声がそれかい。どうしたの、って、君とのデートだと思ったからめかしこんできたんだけどもね。どうやら、本当にただ暇だからという理由で誘われただけだったようだ。俗に言う、暇だし遊ぼうよ、ってやつ。いやまあ確かに誘い文句からして、「暇だから」というものだったんだから、何も間違っていないのだけれども。間違ってたのは私の方で、しかも残念なことに「勘違い」というやつ。  つまり私はたまたま選ばれた友人にすぎない、いやもしかしたら、彼氏彼女がおらずイブを暇している友人は彼にとって私だけだったから仕方なく、なのかもしれない。むしろそのほうがありえる。治也は所謂「イケメン」で、「スクールカースト上位」というやつで、友達もやたらキラキラした人が多いから。例外は私くらいか。  ではこれはデートではない、ただの友達とのお出かけだ。肉まん持って現れるのが何よりの証拠だ。好きな人とデートに行くのに30分も遅れてしかも持っているのが肉まんなんて、そんなことあるはずがない。…たぶん。  なんだか拍子抜けして、ぽけっと立っていたら治也が肉まんをくれた。どうやら私の分も買ってきてくれていたらしい。それはちょっとうれしかったから、すなおに受け取った。 「…ありがと」 「ん。行こ」  まあ普通に考えて、治也が私に告白してくるわけないか。ちょっと残念、いやものすごく残念に思わないでもないけど、でもいいや。友達としてでのお出かけでも、治也と一緒にクリスマスを過ごせるなら、なんでもいい。
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