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反論しようとした矢先、姿月は「だいたいさ」と女子部員達の方へ顎をしゃくった。
「男子、まともに練習もやる気ないでしょ? そんな部が限られた体育館のコートを使う資格あると思う?」
「やる気がないってなんでお前に決めつけられなきゃなんねーんだよ」
「人数」
姿月は鼻で笑う。
「3人しかいないじゃない。それでコート使おうなんてムシがよすぎるんじゃないの?」
大星はぐっと詰まった。
確かに、この場には男子部員が自分と光成、そしてずっと後ろにいた寡黙な1年生の水野しかいない。
というのも、なんとか部員を6人にして同好会から部に昇格させるため、既にほかの部に所属していた友人を無理矢理誘い入れたからだ。
他校との合同チームでも大会には参加できるが、遠い高校しか相手がいない場合もある。
そんな現状なので、部として機能していないといえばそのとおりだが――
「私達は本気で勝ちたいんだよ。今年こそ、全国ベスト4に入ってやるって皆で決めたんだから。テキトーに遊びでやりたいなら、どこでもいいじゃない」
「そ、それでもルールはルールじゃねえか。お前らの都合ばっか押しつけんじゃねえよ」
声に迫力がないのは自分でもわかっているが、言わずにはおれなかった。
姿月は足下に転がってきた赤と緑と白のボールを拾い上げ、手の上で弾ませた。
「そんな説教ゼリフは、私らに勝てるようになってから言ったら?」
主将の言葉に、女子部員達がくすくす笑う。
1回戦負けの姿ばかり見ているからだろう。
「言ったな、このヤロウ」
大星は何かを察して止めに入ろうとした光成を押しのけ、「勝負しろ」と言った。
「は?」
姿月は一瞬、本当に理解できていない顔をした。
今のは何語ですか? みたいな顔だ。
「勝負しろっつったんだよ。試合だ。俺らが勝ったら、ルール守って譲れよコート」
「え、え? ちょっとマジで試合すんの? うちらと? その上、『俺らが勝ったら』? ありえないんですけど」
女子部員達も、「ないわー」と声に出して笑っている。
「やってみなきゃわかんねーだろ。それとも、逃げる? 弱小男バレ部から?」
「はぁー? 逃げるなんて言ってないんですけど?」
かなりベタな挑発だったが、負けず嫌いの女子部主将はあっさり乗ってきた。
「じゃあ試合は……10日後に、ここでだ!」
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