弱小男子、強豪女子に(ムボーに)挑む。

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「そんなことより、時間がもったいないんだろ? 早く始めようぜ」 「……っ! 言われるまでもないっての」 審判は、バスケ部員にやってもらうことにして、先攻のサーブは「ハンデであげるわよ」という姿月の一言で男子になった。 光成からの順番だ。 なんということのない、ごく普通のフローターサーブ。 「はい!」 当然のようにカットされ、きれいにセッター一路に返る。 そして、1年生のスパイカー貴城(たかしろ)が打とうとした瞬間、 「福沢ぁーがんばれよー!」 と見物の男子から太い声援が送られた。 「?!」 貴城がバランスを崩し、手に当たっただけの勢いのない球になった。 「水野!」 無言で水野がそこに入り、アンダーで上げる。 セッターの光成がサイドへ振る。 「大星!」 待ち構えていた大星が、体をしならせて打ち込んだ。 ホイッスルが鳴る。 「おおー!」 まさかの、先制点が男子という事態に、ギャラリーは湧いた。 女子はざわめき、男子からは指笛も鳴る。 「ドンマイ!」手を叩く姿月の目に、殺気が見えた気がしたが、大星はしてやったり、と思った。 次のサーブもあっさりと拾われ、2年の久世(くぜ)が猛烈な勢いでクロスを打ち込む。 「ナイスキー!」 盛り上がる女子とは対照的に、男子は「うっわーなんだよアレ、女かよ」「引くわー」と嘲るようなコメントと態度を示す。 特に、3年の元生徒会長が苦笑いしながら友達と顔を見合わせていると、貴城はうつむいてしまった。 「うるさいよギャラリー!」 雰囲気が悪化しそうな気配を姿月が一喝すると、「こえー」と男子達は笑う。 ネット越しに対面したとき、姿月は大星にすごんだ。 「あんたたち……何をやったのよ? これ、仕込みでしょ?」 「さすがキャプテンは崩れねーか」 大星は頭をかく。
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