1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことより、時間がもったいないんだろ? 早く始めようぜ」
「……っ! 言われるまでもないっての」
審判は、バスケ部員にやってもらうことにして、先攻のサーブは「ハンデであげるわよ」という姿月の一言で男子になった。
光成からの順番だ。
なんということのない、ごく普通のフローターサーブ。
「はい!」
当然のようにカットされ、きれいにセッター一路に返る。
そして、1年生のスパイカー貴城が打とうとした瞬間、
「福沢ぁーがんばれよー!」
と見物の男子から太い声援が送られた。
「?!」
貴城がバランスを崩し、手に当たっただけの勢いのない球になった。
「水野!」
無言で水野がそこに入り、アンダーで上げる。
セッターの光成がサイドへ振る。
「大星!」
待ち構えていた大星が、体をしならせて打ち込んだ。
ホイッスルが鳴る。
「おおー!」
まさかの、先制点が男子という事態に、ギャラリーは湧いた。
女子はざわめき、男子からは指笛も鳴る。
「ドンマイ!」手を叩く姿月の目に、殺気が見えた気がしたが、大星はしてやったり、と思った。
次のサーブもあっさりと拾われ、2年の久世が猛烈な勢いでクロスを打ち込む。
「ナイスキー!」
盛り上がる女子とは対照的に、男子は「うっわーなんだよアレ、女かよ」「引くわー」と嘲るようなコメントと態度を示す。
特に、3年の元生徒会長が苦笑いしながら友達と顔を見合わせていると、貴城はうつむいてしまった。
「うるさいよギャラリー!」
雰囲気が悪化しそうな気配を姿月が一喝すると、「こえー」と男子達は笑う。
ネット越しに対面したとき、姿月は大星にすごんだ。
「あんたたち……何をやったのよ? これ、仕込みでしょ?」
「さすがキャプテンは崩れねーか」
大星は頭をかく。
最初のコメントを投稿しよう!