1.3人の執事

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「……そういえばお嬢様は、人間が怖いのですか?」 「え……?」  突然投げかけられた疑問に、華蓮の思考は乱れた。 「申し訳ありません。 昨晩、少し寝言を聞いてしまいました」 「そう……ですか……」  昨晩は色々あったせいか、久しぶりに昔のことを思い出した。 華蓮は背筋に寒い物が走るのを感じ、自分の身体を抱くようにした。  伊吹は華蓮の横に跪き、彼女と視線を合わせる。 急に近くなった距離感に華蓮は驚いて、彼の顔を見つめた。 「お嬢様は一人では生きていけない。 昨晩のように、賊に襲われでもしたら、貴方には対抗する術が無いでしょう。 ……でも、貴方は人が怖い。 信用できないと思っている」  伊吹の言葉に、華蓮は叱られた子供のような顔をした。 自分でも分かっている、自分の欠点を改めて突き付けられて、彼女は泣きだしそうだった。 「私達は『人』ではありません。 貴方は、私達を信じなさい」 「そうそう。 少なくとも、そこらの賊には負けないし」 「僕も、お嬢様のために頑張ります!」  伊吹に続いて、葛葉、深山も華蓮の傍に寄ってきて、彼女にそんな言葉をかけた。 (私は秘密を抱えている。 それでも、決して一人では生きていけない……。 彼らは、丁度良い機会なのかもしれない)  華蓮は心の中で決意した。 それを察した伊吹が、彼女に手を差し出す。 「それではお嬢様、本日はどのようにいたしましょう?」  華蓮はその手を取り、立ち上がると三人の執事に向かって言った。 「お父様の書斎で過ごします。 明日からの仕事に向けて準備を」  彼女の言葉を聞いた執事達は、そろって一礼した。 「かしこまりました、お嬢様」
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