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前の私と同じように何を喋ったのか聞こえないまま、王子様は優雅に護衛もつけずに1人で去ってしまいました。
私もあのとき、こんな風に佇んでいたんでしょうか。
取り残された馬車は、とりあえず従者に頼んで館へと持ち帰りました。
事の顛末を侍従に話すと、今度も助言をくれました。
「アクセサリーなんかはどうでしょう」
失念していました。
こんなにもシンプルで思いを伝えられるものは他にあるでしょうか。
私はすぐに宝石職人に作らせ、次のパーティーで王子様にお渡ししました。
けれど。
「これは…………個性的ですね」
なんということでしょう。
私の思いが爆発しすぎて、気づけば装飾過多のゴツい指輪でした。
こんなに近くてもキラキラまぶし過ぎて目が痛いです。
「これは忘れてください。また機会を改めて!」
私は次こそ間違いがないようにと決意し、王子様の声を振り切ってドレスの裾を思い切り引き摺りながら会場を駆け去りました。
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