空の果ての境界線

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彼女が指さす。黄昏は泡沫の如く消え去り、空は、大地は、黒一色になった。もはやその境界線も見えず「何も見えないよ。」と俺が言うと、彼女は「空と大地が一つにみえますね。」と言った。暗がりで表情は見えないが、笑っているのだろう。彼女はやはり笑ったような声で「でも。」と発した。 「でもどんなに一つになっているように見えても、空と大地が一つになるなんてこと、ないんです。」 その声は、笑っているようにも聞こえたけれど、それでも、いままで聞いた言葉の中で、一番寂しそうに聞こえた。どんな表情をしているのだろう。そう思って彼女の頬に触れる。触れた所で、彼女の表情は見えない。彼女は「ね。暗がりと同化してても、私はここにいて、触れるでしょ?」と、俺の手に、自分の手を添えた。 「漸近線がどんなに進んでもx軸に触れないのと一緒で、ギリギリのギリギリ、さらにもっとギリギリまで近付いても、空も大地も私たちも、何かと一つになるなんて出来ないんです。」 それはそうだね。と、でもそういうと少し寂しいね。と、返事をしようとした矢先に口に何かがあたって遮られた。言葉を失った俺に対して、彼女は気にせず言葉を続ける。 「空には果てがあるから、どんなに近くまで行っても大地にはたどり着かないんです。」 「私はいつか、空の果てに行ってみたいなぁ。」 「空に果てがあることが証明出来たら、きっとそこに私が求めていたものが、あるんじゃないかなぁって。」     
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