堪忍袋

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「要らない!」 階段から叫んだ私に、おかあさんが肩を跳ね上げて振り向いた。 私は口と共に足も止められずにいた。 ドタドタと、普段ならおばあちゃんに怒られる音をたてて、私はおかあさんの前に走った。 「要らないから! お年玉って、相手の幸せを願って渡すものでしょ? 義務なんて要らない! 形なんて要らないんだから!」 涙が、関係なく出た。 おかあさんを馬鹿にするな。 おかあさんを責めるな。 渡しに来たのがおとうさんじゃないのなら、もう、家族じゃないじゃん。 「そんな結婚祝いみたいな袋渡されても、嬉しくないんだから! 私は、私は…もう世界一のお年玉を貰ったから、そんなものは要らない!」 他人が、私達の幸せに文句言うな! おかあさんを見れずに、私は女の人の手にあるお年玉を押し返した。 女の人は、もう何も言わずに背中を向けて帰って行った。 帰ったけど、まだそこに見えない敵がいるようで、私はボロボロと涙を流しながら睨み付けていた。 .
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