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目指すお店は家からすぐ近くにある。焦って入り口の自動ドアに激突した時は、まわりの人たちがびっくりしたり心配したり笑ったりして相当恥ずかしかったけど、気を取り直して売り場まで一直線に向かう。
「あら……あっくん、ひとりで来たの?」
顔なじみのお店のおねーさんが、僕を見てすごく驚いた。
「どうしたの? お使いかな? 何がほしいの?」
「サフラワー!」
僕は元気に答えた。
「サフラワー? サフラワーがほしいの?」
「サフラワー!」
「ふふ、わかったわ」
おねーさんはにっこり笑うと、棚からサフラワーの袋を取り出した。これ! これだよ!
「税込みで540円になりまーす」
さあ、いよいよ魔法がかかる。ただの紙切れがサフラワーになるのだ。
ものすごく緊張してるけど、僕はいかにも慣れているふうを装って、クールに紙を差し出した。紙を受け取ったおねーさんが、僕にサフラワーの袋を持たせてくれた。
やった!
僕のサフラワーだ!
この袋に入ってるサフラワーの種をぜーんぶ出して床に敷き詰めて、その上をゴロゴロ転がるんだ!
感動に胸が熱くなった。お正月よありがとう。お年玉よありがとう。
はやる気持ちを抑えられず、僕は家へと猛ダッシュした。うしろからおねーさんの「あっくん、お釣り!」という声が聞こえたけど、今はそれどころじゃない。
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