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家に着くと、おかーさんが目をまんまるくした。
「あっくん! それ、あっくんが買ってきたの!?」
うん、はじめてのおつかい、大成功。
「あっくんの欲しいものって、やっぱそれかぁ」
おとーさんが呆れたように笑った。いいじゃないか、人それぞれ欲しいもの、大事なものは違うんだから。
「じゃ、せっかくあっくんが自分で買ってきたんだからな。サフラワー食べるか?」
「サフラワー!」
僕は待ちきれなくて、思わずバンザイした。両腕だけじゃなく、片足まで上げてしまった。
「はい、どうぞ」
差し出されたサフラワーをひと粒つかんで、口に含む………って、いや違う、僕はサフラワーを敷き詰めた床を転がりたいのだ。
サフラワーの詰まった袋を持つおとーさんの腕にしがみついた。僕のサフラワー。僕が買ってきたサフラワー。
「こらこらあっくん、重たいよ」
「サフラワー!」
「もっと食べたいの?」
ちがーう、床に敷き詰めてほしいの!
「サフラワー! サフラワー!」
僕はおとーさんの腕にちょっとだけ噛みついた。理性がぶっ飛んじゃってたんだ。
「いててっ! こらアレックス!」
はっと我に返って、僕は首を竦めた。ごめんなさい。
「あっくんの嘴って尖ってるから、けっこう痛いのよねぇ」
「大型インコって力もあるからなぁ」
えっ───
おとーさんの言葉に、僕は持っていたサフラワーをぽろりと落としてしまった。
″大型インコって力もあるからなぁ″
僕………
僕ってオウムじゃなくて、インコだったの?
[おわり]
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