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舞い散る桜の花びらを纏った少女が、レナの瞳に映し出された。
その少女は銀の髪飾りを付け、満面の笑みを浮かべる。
「嘘……でしょ……。さ……サクラ……ちゃん?」
「ただいま、レナちゃん」
「本当に……サクラちゃんなの?」
夢でも見ているのかと、レナは呆然と立ち尽くす。
「そうだよ。少し前までは、フブキって呼ばれていたけどね。サクラとフブキで桜吹雪……なんてねっ。あっ、怒らないでよ。ほら、一発くらい殴ってもいいからさ」
堪えていた涙が溢れ出し、レナは勢いよく飛びついた。不意を突かれ、サクラは尻餅をついてしまう。
「わわっ!」
「サクラちゃん! サクラちゃん! サクラちゃん!」
「ごめんね、レナちゃん。ずっと見てたよ。頑張ったね……」
胸に埋まり泣き続けるレナを、サクラは優しく抱きしめる。
その横では、トウマが不満そうな顔で睨み付けていた。
「ふざけてないで、早く説明しろ」
「分かってるって。でも、ちょっとだけ待ってよ」
レナが落ち着くまで待ち、サクラはゆっくりと話し始める。
「胸に刺さった矢は、致命傷を避けていたらしいんだ。でも、心臓が圧迫されて気絶した私は、殆ど呼吸をしていなかった。医者のヒロ先生でも、最初は死んでると思ったらしいの。みんなが勘違いするのも仕方が無いよね。それで、馬にゆられた振動で痙攣した心臓が動き出して、私は意識を取り戻していたんだけど……声は出せず目も開けられなかった……」
サクラは銀の髪飾りを外し、レナに手渡した。
「この銀の髪飾り……とっても嬉しかった。寂しくないようにって、レナちゃんの声は届いてたよ。その時、思ったんだ。もし命が助かるのなら、レナちゃんの影になって助けようって。一命を取り留めた私は、ヒロ先生の家を訪ねて来たシンドウ様にお願いしたの。その時は確証なんて無かったけど……大臣のシキが反乱を起こそうとしているから、手を貸してくれってね」
サクラが言葉を切ると、トウマが話を繋ぐ。
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