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トウマとリュウイは一定の距離をとり、剣を構えたまま動かない。互いに牽制し、緊迫した空気が流れる。
先に沈黙を破ったのはリュウイだった。
「時間を稼ぎ、援軍を待つ作戦ですか? さて、あちらは援軍が来るまで持ちますかね?」
トウマは視線を逸らさず、レナがエンを確認する。
幼い頃から武を磨き、戦場にて経験を重ねたエン。そんな鋭い剣を、イツキは余裕の表情で捌き続けていた。
「強くなったな。だが、私の力には遠く及ばない」
「ハアッ……ハアッ……クッ……」
渾身の力で攻撃を弾き返し、息を切らして距離を取る。
腕の痺れが取れないエンに対し、イツキは初めて構えを見せた。
「私は絶対的な王となる。さあ、終焉の時だ」
凄まじい速さで大剣を振り下ろし、剣を弾き飛ばす。そして、エンの肩から鮮血が噴き出した。
「エン兄様! エン兄様!!!」
レナは色を失い、無我夢中で駆け出す。すると、イツキが標的を変えて斬り掛かった。
エンの側近兵たちが阻むも、凄まじい一撃で吹き飛ばされてしまう。
「無駄だ。これで、王家の血筋は絶える」
非情の剣がレナへと振り下ろされる。
トウマは動けない。否、信頼する仲間の気配を背中に感じて動かなかった。
そして、激しくぶつかり合う金属音が響き渡る。
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