44人が本棚に入れています
本棚に追加
「エン様、すぐに手当てをします。誰か、早く医者を!」
「トウマ……レナは無事か? もう……目が霞んで……見えないんだ……」
「うっ……うっ……わ……私は……ここにいます……」
「そうか……良かった……。レナが無事ならば、この国は安泰だ……」
止め処無く溢れる涙が頬を伝う。
「そんな、エン兄様……死んじゃ……嫌だよう……私を一人に……しないで……」
「大丈夫だ……レナには……心強い味方がいる……。トウマ……この国は……争いが無くなるだろう……だが……まだ、お前の力は必要だ。後は……頼んだぞ……」
「お任せ下さい……必ずや……ご期待に……」
トウマのかすれた声が耳に届き、エンは微笑みを浮かべる。
そして、静かに息を引き取った。
総大将を失ったイツキの軍は降伏し、レナは兵を纏め光国へと引返して行く。
勝利も敗北も無く、その光景は悲しみに包まれていた。
最初のコメントを投稿しよう!