桜吹雪

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「さあ、お手を」  優しくレナの手を取り、トウマは森の中へと入って行く。  やがて、広い空間に辿り着いた。その中心に立って空を見上げる。  十年の時を経ても色褪せず、突き抜けるような青空と、見渡す限りに広がる幻想的な桜がレナを魅了した。 「ここは……山賊に襲われて……」 「レナ様が幻想国を思い描いた始まりの場所です」 「懐かしいですね。あれっ? トウマ……さん?」 「レナ様には、今から大切な事を伝えねばなりません」  神妙な面持ちのトウマを見て、不安で胸が締め付けられる。 「国を一つにして争いの無い平和な世の中にする。その幻想とも言える願いが、レナ様の手によって叶えられました。そこで、私はこの国を出ようと……」 「駄目です!!! わっ、私は、トウマさんがいないと何も出来ません!」 「サクラとの約束は果たしました。そして、私はエン様との約束を果たさねばなりません。成長されたレナ様なら、きっと大丈夫です。桜国は平和になりますよ。それに、レナ様は一人じゃありません」 「確かに、優しい皆さんに助けられています。でも、お父様もお兄様方もいない……。私が本音で話せるのは、もうトウマさんしかいないんです!」  必死に懇願するレナを、トウマは優しく抱きしめた。 「辛かったですよね。よく頑張ってくれました。私はレナ様に仕えられた事を誇りに思います。これからは、私の何倍も頼りになる人物が支えてくれますよ」 「そんな……トウマさんの代わりなんて……」 「振り返って、ご自身の目で確かめて下さい」  トウマの目線を追って振り返る。
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