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「レナ様、秘密にしていた無礼をお許しください。敵を欺くには、先ず味方から……シキの陰謀を暴く為に、サクラは辛い選択をしたのです。ですが、サクラが陰で動いてくれたからこそ、早期にシキの野望を見破り、光国潜入の策が成功したと言っても過言ではありません。私は光国へ潜入した時に全てを知りました。イツキの侵攻が予想以上に早かった為、すぐには真実を話せず……申し訳御座いません」
膝を突いて頭を下げると、レナが必死に声を出した。
「あっ……あっ……あう……」
「レナちゃん、どうしたの?」
「りっ……理由なんて……どうでもいい……。もう……絶対に……離れちゃ……嫌だよう……」
ずっと一緒だよ……そう耳元で囁き、レナをもう一度抱きしめる。誰も口を開かず、無事に再会出来た喜びを噛みしめていた。
やがて涙は止まり、落ち着きを取り戻したレナがトウマを見つめる。
「トウマさん……本当に、平和が訪れたのでしょうか? 幻想国は誕生したのでしょうか?」
「難しい質問ですね。争いは本当に無くなったのか……平和な時代が訪れたのか……」
トウマが口角を上げたまま言葉を濁すと、サクラが嬉しそうに答えた。
「平和な国が……幻想国が誕生したんだよ」
十年前と同じように、トウマが問い掛ける。
「ほう。どうやって平和な国が誕生したのか、教えてくれないか?」
「ふふっ……優しい王様が信念を曲げず、幾つもの辛い試練を乗り越えたからだよ。大変な道程だったけど、二人の軍師が道を作り、女にだらしない最強の剣士と、笑顔の絶えない女兵士が支えてくれたの。そして、優しい王様を大好きな人達が一つになって頑張ったから、幻想国は誕生したんだ」
お日様のような笑顔のサクラを見て、レナも自然と笑みが零れる。
強い風が吹き付け、桜吹雪が大空へと吸い込まれて行った。
まるで、二人の未来を祝福するかのように……
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