計算された奇襲

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 イツキの侵攻を迎え撃つべく、エンの率いる本軍は前線へと到着した。  トウマ達を連れ幕舎に向かうと、可愛らしい女兵士が手を振りながら駆け寄る。 「レナ様、トウマ様!」 「レンカ、無事の様だな。ゾイは何処にいる?」 「ゾイ様は戦場にいます……あっ、噂をすれば戻られましたよ」  振り返ると、フラフラと歩くゾイが近寄って来た。 「ゾイさん、大丈夫ですか!?」  レナが駆け寄り、心配そうに見つめる。 「大丈夫だよ。ただ……少々疲れた」  ゾイは歩みを止めずにトウマの前まで移動し、座った目で睨み付けた。 「まだ数日は余裕があると言ってたよな? 敵軍が総攻撃を仕掛けて来た。いくら私でも厳しい戦いだったぞ……これは貸しにしておくからな」 「総攻撃だと!? 先方隊じゃないのか?」 「分かっていて、私に無茶をさせたのでは無いのか? となると……まあいい。一度しか言わないからよく聞け。接触は止めておいたが、大将軍イツキの姿を確認した。どうやら敵は、この地を決戦の舞台とするつもりらしい。私が無理やり押し返した為、進軍を止め、様子を伺っている。今は野営の準備をしているはず……以上だ。詳しい事はレンカちゃんに聞いてくれ。私は寝るから、絶対に起こすなよ」  一方的に話し続け、倒れそうな足取りで幕舎の中へと消える。そんな姿を心配そうに見つめ、レンカが口を開いた。 「私を本陣に戻し、ゾイ様自身は危険な箇所を飛び回っていました。全く休みも取らず、疲労が限界に達したのでしょう」 「そうか……後は俺が直接指揮を執る。レンカはゾイについてやってくれ」 「はい!」  レンカは嬉しそうに頭を下げ、ゾイの後を追った。それを見送ると、トウマは全軍に細かな指示を始める。  エンとレナも陣中を回り、兵士を鼓舞して士気を高めた。
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