43人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ゾイ様、どうされました? まだ疲れが抜けませんか?」
「レンカちゃんのお蔭で体調は万全だよ。それより……」
背後から物音がして言葉を切る。振り返ると、ボロボロになったクミが倒れていた。
「クミさん!?」
気を失い掛けていたクミをゾイが抱きかかえる。
「クミさん、一体何があった!?」
「イツキが……側近兵を連れて……丘の上に現れたの……。ゾイ君……お願い、レナちゃんを助けて……。レナちゃんは、死んじゃ駄目なんだよ……だって、レナちゃんは……あの事を、知らない……」
「イツキだと!? 分かった、後は私に任せろ」
力強い声に安堵して、クミは意識を手放した。
ゾイは静かに丘の上を睨み付け、クミの体をレンカに預ける。
敵の数が多ければ、既にトウマ達は捕まっているか、決死の覚悟で丘を降りているはずだ。クミだけが逃れて助けを求めるという事は、イツキが率いる少数精鋭と戦っているのだろう。
「ゾイ様、すぐに行きましょう」
「いや、丘の上には私だけで行く。レンカちゃんはクミさんを頼む。それと、各兵士長に指示を出して全軍集めるんだ」
理解が出来ないレンカは動けず、呆然とゾイを見つめた。
「レンカ、急げ! 私の考えが正しければ、この場に敵の攻撃が集中するはずだ!」
戦場では冷静なはずの男が声を荒げ、レンカは慌てて動き出す。
それを確認すると、ゾイは勢いよく丘を駆け登って行った。
最初のコメントを投稿しよう!