計算された奇襲

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「ゾイ様、どうされました? まだ疲れが抜けませんか?」 「レンカちゃんのお蔭で体調は万全だよ。それより……」  背後から物音がして言葉を切る。振り返ると、ボロボロになったクミが倒れていた。 「クミさん!?」  気を失い掛けていたクミをゾイが抱きかかえる。 「クミさん、一体何があった!?」 「イツキが……側近兵を連れて……丘の上に現れたの……。ゾイ君……お願い、レナちゃんを助けて……。レナちゃんは、死んじゃ駄目なんだよ……だって、レナちゃんは……あの事を、知らない……」 「イツキだと!? 分かった、後は私に任せろ」  力強い声に安堵して、クミは意識を手放した。  ゾイは静かに丘の上を睨み付け、クミの体をレンカに預ける。  敵の数が多ければ、既にトウマ達は捕まっているか、決死の覚悟で丘を降りているはずだ。クミだけが逃れて助けを求めるという事は、イツキが率いる少数精鋭と戦っているのだろう。 「ゾイ様、すぐに行きましょう」 「いや、丘の上には私だけで行く。レンカちゃんはクミさんを頼む。それと、各兵士長に指示を出して全軍集めるんだ」  理解が出来ないレンカは動けず、呆然とゾイを見つめた。 「レンカ、急げ! 私の考えが正しければ、この場に敵の攻撃が集中するはずだ!」  戦場では冷静なはずの男が声を荒げ、レンカは慌てて動き出す。  それを確認すると、ゾイは勢いよく丘を駆け登って行った。
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