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第2章
2)
あの日、ソーダ水を飲みながらセオとおしゃべりして、機嫌よく家に帰ったルイーズを待っていたのは父の暴力だった。
父は真っ昼間だと言うのに、もうぐでんぐでんに酔っており、ルイーズの顔を見るなり、拳で彼女の小さな顔を殴りつけた。「お前はどこで油を売っていたんだ!」と言いながら。
「ごめんなさい! パパ」
ルイーズは頭や顔を両手でかばいながら、キッチンから居間へと家中を逃げまどった。
いつもならルイーズを1発殴れば気が済む父だったが、その日は違った。居間の暖炉の火かき棒を取り上げると、彼女に向けて振り上げたのだ。
その時、間一髪ルイーズを助けてくれたのは、セオだった。
セオはなんとなく嫌な予感がして、ルイーズと別れたあと自分の家には帰らず、彼女の家まで来てみたのだった。
窓から見えた地獄絵図に、慌てて玄関から飛び込んだセオは「やめろ! 」と叫んで、ルイーズの父を背後から羽交い締めにした。
ふたりはしばらくもみ合いになった。ルイーズはなすすべもなく、彼らの息遣いだけが聞こえる部屋の隅で、頭を抱えて震えていた。
状況が一変したのは、セオがルイーズの父親を思いっきり突き飛ばしたことによってだ。
不運なことに、ルイーズの父は暖炉の角にしたたか頭を打ちつけ、大きな音と共に昏倒してしまった。
「パパ!」
「おじさん?」
セオとルイーズは同時に叫び、慌ててルイーズの父に駆け寄ったが、彼は驚いたように目を見開いたまま、こと切れていた。
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