第4章

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第4章

7) 「ルイーズ、すまない。今日君に会いに来たのは、君から金を借りたかったからなんだ。絶対に返すから。今、どうしてもリーアムのために金が必要なんだ」  セオの両眼から涙があふれてきた。  ここに来るまで、セオはルイーズに会ったら、昔の感情が甦ってルイーズに夢中になってしまうことを恐れていた。  実際、つい先ほどまでは、完全に家族のことを忘れていた。  ルイーズの美しい顔を目の前にすると、彼女のことしか考えられなくなってしまっていたのだ。  しかし、いま、セオは気がつくとルイーズの前に土下座していた。ルイーズの発した「リーアム」の一言が、一瞬にして現実に引き戻してくれた。  しばしの沈黙が流れる。  耐えられなくなったセオが顔を上げると、(さげす)むようなルイーズの顔があった。だが、それは見間違いかもしれない。セオが(まばた)きする間に、ルイーズの顔は元の美しい笑顔になっていたのだから。 「いやだわ、セオ、立ってちょうだい。もちろんお金はお貸しします。いいえ、あなたへのプレゼントのつもりでご用立てさせてもらうわ」  穏やかな笑みを浮かべたまま、ルイーズは言った。 「ルイーズ。…… その…… つまり、それは口止め料ってことかい?」  セオは様子を伺うように低い声で尋ねた。  ルイーズは笑顔を崩さずに、しかしきっぱりと言った。 「何を言っているのかしら? あれは不幸な事故だったはずよね。仮に私が悪いことをしたとしても、あなたもそれに乗ったのよ。私達は共犯者。永遠に、お互いの胸に秘めて行かなければならないのよ」
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