第3章

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6)  突然シャワーを浴びるように勧められたセオはびっくりした。  そこに深い意味があるのかどうか、ルイーズの顔を見たが、何のサインも読み取れない。 「悪いけれど、何か冷たい飲み物をいただけないかな? 途中どこも休憩せずに、ひたすら運転してきて疲れているんだ。今は温かいシャワーより、冷たい飲み物がありがたい」 「ちゃんとあなた用に冷たいレモネードを用意してあるわ。……それともソーダ水のほうがいいかしら?」  ソーダ水という言葉を口にした瞬間、ルイーズの顔のふたつのエメラルドが(きらめ)いた。  やっとルイーズの顔に笑顔が戻った。  つられてセオも笑った。 「ルイーズ」 「セオ」  次の瞬間、二人はしっかりと抱き合っていた。 「ずっとこうしたかったのよ」 「俺もだよ」 「20年遅かったわ」 「遅くないよ」 「いいえ、知ってるわよ。あなた、エマと結婚したのよね。いつもあなたを、ずっと物陰から見ていた……私、あなたがファンレターくれた時、嬉しくてすぐあなたのことを調べたの、失礼とは思ったけど。お子さんのリーアムがご病気なんですってね」  セオの胸に顔を埋めたまま、ルイーズはささやく。  リーアム! 不意に、リーアムの青白い顔が浮かんで現実に戻ったセオは、ルイーズを抱きしめていた手を放し、彼女の肩を掴んだ。  突然引き離されたルイーズは、(かす)かに非難するような表情でセオの顔を見上げた。
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