第1章

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「お待たせ、生きる事を選択したのか? ヒーローの君が望むのなら何時でも引き返すぞ」 「否、心変わりした訳では無い。(俺をヒーローと呼ぶな) 俺がアフガンやイラクで戦闘に従事している時に、浮気していた女とこれ以上会話を続けたく無いからだ」 「そ、そうか…………それじゃお別れだな。 君の事は今日救出された人達の心に、ヒーローとして何時までも残るだろう」 「ハハ。(俺はヒーローなんかじゃ無い!) 1つだけ頼みがある」 「何だ?」 「あんなだが、一時は愛しあって結婚して娘まで産んでくれた女だ。 あいつと娘を頼む」 「分かった、サヨナラ」 「幸運を、交信終了」 男は無線機を放り出し頭を抱え、今このアパートのこの部屋にいる訳を思い起こす。 戦場から帰ってきた男を待っていたのは、離婚を求める女房と他人を見る目で父親を見る娘、それに、戦場に行っている間家族の面倒を見てくれるように頼んだのに、女房と浮気して家族を奪った親友だった男。 戦場に行く前まで勤めていた会社の仕事は他の者に奪われていた。 彼が戦場から戻ってくる前年に市長に当選していた親友だった男に頭を下げ、仕事を紹介してもらう。 しかし、娘の誕生日には招待されず合わせても貰えない事に抗議したら、直ぐに仕事を首にされた。 仕事を首になり今までの仕打ちを思い出して怒りで頭がはちきれそうになった男は、親友だった男やその男を市長にした街の奴らに復讐する事を決める。
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