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次々と変わる曲に美咲の身体は悲鳴を上げはじめた。
履き慣れないピンヒールのせいでできた靴擦れからは血が流れ、疲労でヒールが折れ捻挫をしても曲は流れ続けた。
『足が痛い…。 もう嫌だ…。 もう踊りたくない…。 誰か止めて…。』
激痛と恐怖から叫び続け、声も出なくなった美咲はひたすら踊り続けるしかなかった。
どの位時間が過ぎたのだろうか、いつまで経っても終わらないタンゴに懇願するためパートナーの顔を見た瞬間、美咲は小さく悲鳴を上げた。
先ほどまで体温を感じ、笑い掛けていた男性はまるで人形かロボットの様に無表情のまま美咲を見つめていた。
『嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!! 恐い! 恐い!』
悲鳴を上げるものの、美咲の口はピクリとも動かない。
瞼を閉じる事も出来ない美咲はギシギシと音を立てながらゆっくり首を動かすとと自分の右腕を見た。
ノースリーブから出る腕はマネキンの様に光沢を放ち、間接部分には球体が取り付けられていた。
陽の光に当たり、腕からはキラキラと糸が天に向かって伸びていた。
思考が薄れていく中、激痛だけを感じ美咲はただただ踊り続けた。
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