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ある夜、智衣は喉が渇いて目を覚ました。
クリスマスはおいしいものをいっぱい食べて、お菓子をおなか一杯食べていいことになっていた。
だから、寝る直前までスナック菓子をむしゃむしゃと食べていた。
ベッドに入る前もちょっと喉が渇いたと思っていたのに、そのまま気が付かなかったふりをして眠りに行ったら、夜中に猛烈に喉が渇いて目が覚めた。
あまりの喉の乾きに、目をこすりながら廊下に出て、ぼんやり明るい光が漏れ出ているリビングまで歩いていく。
パパとママはまだ起きていて、リビングの明かりがついているのだと小さい智衣にもわかっていた。
怖い夢を見たときは、いつもリビングに行くから。
ママに牛乳もらわなきゃ。
そんな風に思って、リビングのドアを開けようとした。
「……そうなの。もう、治療はいいって……」
智衣はママの声がいつもと違うことに気が付いて、ドアに手をかけたまま動きを止めた。
パパが「そうか……。お義母さんがそう言うなら……」といつになく元気のない声で返している。
「信じられない……来年の今頃はもう死んでしまってるかもしれないなんて……」
智衣は目を丸くしてますます渇いた喉にごくりと唾を飲みこんだ。
ママが泣いている。
ママは泣いたことなんてないのに。
難しいことはわからないけれど、おばあちゃんが病気で入院していることは知っていた。
何度もパパとママとお見舞いに行った。
だから、知っていた。
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