3人が本棚に入れています
本棚に追加
書斎を出た後、書庫に移動した雨音は本の続きを読み始めた。
「うぅぅ~~~!! 集中出来ない!!」
雨音は勢いよく本を閉じると深くため息を吐いた。
頭の中を占めるのはエドワードの事ばかり。
動く度にエドワードの香りが身体中を包み込み、嫌でも思い出してしまう。
雨音は両手で顔を覆うと何度もため息を吐く。
「恥ずかしい…。」
「何が?」
急に声を掛けられた雨音は驚き過ぎて咳き込んでしまった。
「大丈夫?」
雨音は涙目になりながらも頷いた。
「キリ。 お願いだから驚かせないで。」
音も無く急に現れるキリに雨音は毎回驚かされていた。
「だって、雨音しか驚いてくれないんだもん。」
キリは子供らしくニカッと笑うと、一緒に食堂に向かった。
扉を開くと、既にエドワードが席に着いて待っていた。
いつものように両肘をつき組んだ手で口元を隠すが、その目はいつもよりも優しさに溢れていた。
「あ、ごめんなさい。」
自分よりも早く来ているとは思ってもいなかった雨音は申し訳なさそうに席に着いた。
相変わらず一言も話さないエドワードに、雨音は顔色を窺いながらもポツリポツリと今日も一日の出来事を話す。
今読んでいる小説の続きに屋敷中を歩き回った事。
でも、夢の話しと書斎で昼寝をしてしまった事だけは言えずにいた。
「そんなに怯えながら話さなくていい。」
ぶっきらぼうな言い方だが、たまに見せるエドワードの優しさに雨音の心は温かくなった。
最初のコメントを投稿しよう!