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 偽装された結婚とその裏の鶏姦。あらかじめセッティングされたセックス。森の中で盛り上がる不浄な劣情。  1936年に蘇る飽満なソドムを崩壊させるため、遣わされた使者に追従し、信奉せよ。さもなくば塩の柱となり死にさらせ。  垢抜けない赤毛の美少年が、薄いガラス一枚隔てた大広間をちらちら見ながら袖を引く。 「ねえジョージ、もうやめてよ……ホエールさんに怒られちゃう」  パーティーは今を盛りとばかりに弾けている最中だった。二人のゲストが古めかしい手段で敢行した不倫を、彼らは不品行とは思わないだろう。だが乱入者との乱闘へは、抜本的な罰則を宣告するに違いない――ホモセクシャル・コミュニティからの放逐。  浮かんだ怯えへ追い打ちをかけようとしたその時、急かす手が背中をどやす。立ち回りを盾に、ライカのフィルムをまめまめと巻き上げていたジャンピング・ジャックが、前のめりの体に待ったをかけた。 「そろそろお開きだ、相棒」  睫にまとわりつく血潮は、視界を完全にシャットアウトしている。袖で削ぎ落し、俺は最後に鉄錆味のつばきを馬鹿者の面へ徹底的にサービスした。 「俺に逢い引きを見つけられてるようじゃ、長老派のお偉いさんにもすぐさま化けの皮を剥がれるぜ」     
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