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ウエストレイク・パークの南西に並ぶ建物の二階。「ウエストレイク・リサーチ・サービス」の立地は治安面で言えば地に堕ちたも同然だが、仕事面で言えば秀逸だった。夜中の2時を過ぎていたから、既に階下の電気会社は看板を下ろし、しんと静まり返っている。
俺は革張りカウチの中、ワイルドターキー3杯で羽ばたき、額に光るガラスの欠片をほじくり出した。新たに噴き出した不潔な血で応接セットを汚損した時、ぼろい黒電話が苦鳴のベルを響かせる。
「ジョージ・キャンベルはタチなのかネコなのか、それとも真っ当な男なのか」
あん畜生のアンディ・トーン。奴の目は迷惑な事に、さっぱり冴えているようだった。
「たった今帰ったところだぜ。盗聴機でも仕掛けてるのか」
「ベルリンとは9時間の時差がある。こっちもついさっきまで電話会議だ」
強張った声は怒り、苛立ち、忌々しげで、いきっている。うんざりと倦んだ息で呻きながら、俺はグラスに差し入れ濡らした指を、グロテスクな裂け目に塗り付けた。
「お稚児さんにのし掛かってたが、詳しい話は知らん。口の軽い男娼といちゃついて、話が漏れる前に、とっとと追い出した方がいい」
「なんてこった。奴は今、撮影に入ったばかりなのに」
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