5人が本棚に入れています
本棚に追加
「泣いて脚へ縋り付けって言うのかよ」
「私への謝罪はいらん。ホエールに頭を下げてこい。キャンベルの写真、明日の昼には間に合うか」
「俺を誰だと思ってる」
受話器を置きざま、ふと思う。俺は一体、何様だ? 虚栄とはったり、挙動不審な破廉恥漢。頬を伝う滴を舐めれば、腐った血、と言うよりクソの味がした。
ワイルドターキーへ別れを告げる勇気を見いだせない内に、ジャンプは仕事を終了させた。ゲロを吐きそうな現像液、酢臭い澄まし顔。人の手からターキーを奪い、対面のソファに埋まる。
「写真は問題ない」
グラスに指二本分注げば、七面鳥は死んだも同然。コーク材のコーヒーテーブルに、殆ど空の瓶が返された。
「そっちは?」
「『プリンス・オブ・ホエールズ』のご機嫌を取れと。お前も付いて来い」
「なんでだよ」
「怖いんだ、ケツを掘られたくない」
正直に申告しても、奴はここぞとばかりの哄笑を堪えなかった。
「噂じゃ奴の好みは金髪碧眼の溌剌タイプらしいな。ぴったりじゃないか。せいぜい愉しんで来いよ」
「死んでやる、死んでやる、死んでやる。お前を撃ち殺したあと、舌を噛みきって、手首と喉を切って、死んでやるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!