新春お年玉争奪戦線

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 新年の夕餉の後の、ささやかな余興。一昨年の仁志様や会長はそう考えておられたようですが、子どもたちにとっては一大事でございます。何せ、貰えるはずのものが、貰えなくなる可能性があるわけですから。それに、名家のお年玉ともなると、金額もかなりのものです。 「さて、そろそろ始めてもらおうかな。和美さん。お願いします」 仁志様のその言葉で、子どもたちの背筋がぴんっと伸びました。 「それでは、第三回、新年予算委員会を始めさせていただきます」 一族の皆様が注目される中、大広間の壇上に立つのは、やはり緊張いたします。 「今回、親族の皆様からいただいたお年玉の総額は、ちょうど100万円でございます」 それを聞いた子どもたちは、どことなく落ち着きがありません。去年と比べて金額の桁が一つ上がったからでしょうか。 「例年どおり、寿家の御令嬢、御子息で、この100万円をどう使うのか、プレゼンしていただきます。審査員の皆様と、プレゼンしたご本人たちを合わせて8票。最も多く票を得た方が、100万円を獲得します。票が割れた場合は、一位が決まるまで投票を続けます。プレゼン中は私語厳禁。プレゼン後、質疑応答の時間を設けますので、プレゼンターに質問されたい方はその時にお願いします」 簡単なルール説明を済ませ、わたくしは壇上から降りました。  プレゼンの順番は年功序列。トップバッターは、長女の珠子様です。今年で大学二年生になられる珠子様は、容姿端麗、成績優秀と、まさに才色兼備を絵に描いたような方でございます。噂によると、ミスキャンパス最有力候補なのだとか。今年はどんなプレゼンをなさるのか、楽しみでございます。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!