0人が本棚に入れています
本棚に追加
珠子様が登壇されます。その楚々とした立ち振る舞いに、同性ながら思わず惚れ惚れしてしまいました。
「長女の珠子です。私は、お年玉を頂戴したあかつきには、祖父母の住居のリフォームに充てたいと考えています。ご存知の通り、私は大学で建築学を専攻しておりまして、現在、限られたスペースでの豊かなライフスタイルを研究しております。その研究の一環として、築三十余年の会長様のご実家を、リフォームさせていただきたいのです。リフォームの計画に関しては、私に一任していただければ、快適な居住空間をお約束いたします」
親孝行ならぬ、祖父母孝行でございますね。見た目だけでなく、心も美しい珠子様のプレゼン、感無量でございます。
「それでは、質疑応答の時間です。質問のある方は挙手でお願いします」
すかさず、長男の雅志様が手を挙げました。
「リフォームと一口に言っても、具体的にどこをどうリフォームするの?例えば浴室をリフォームするだけでも、場合によっては100万円を超えるし、最近はDIYなんてものも流行ってるから、数万円でリビングを一新することもできる。ピンハネし放題じゃないか。そこんとこどうなんだい姉さん?」
さすがは雅志様、鋭い質問です。珠子様は上品でありながら、したたかな方でもございます。リフォームに割く金額をなるべく少なくして、残りは自分のポケットに。というようなことを考えていても不思議ではありません。良家の御令嬢とはいえ、普段から自由にお金を使えるわけではございませんから、もとより浪費家の珠子様が、この機会に私腹を肥やしたいと思うのは自然なことです。
珠子様が答えに詰まっていると、当主の仁志様が手を挙げました。
「珠子は、第一回のプレゼンで優勝していたな。家族全員分の洋服をデザインして、オーダーメイドの服を提供するとかなんとか。俺もスーツを貰ったが、とてもじゃないけど仕事で着られるようなものではなかった。素材はチープだし、縫製も良くない。幸子のスカートも、ファストファッションブランドの既製品の方がよほどマシだと思える出来だった。あの時のお年玉は80万円。珠子、俺たちの洋服にいくら使ったんだ?」
仁志様の手厳しいご指摘には、さすがの珠子様もたじたじのご様子。わたくし、珠子様が余ったお金で高級ブランドの服を買い漁っているのを見たことがあります。何も反論できないまま、珠子様のプレゼンは終了しました。
最初のコメントを投稿しよう!