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鏡さんがため息をつくように鏡面が曇ります。
「だいじですよおお。貴方に世界で一番美しいと認められるということは、すなわち真のミスユニバースという事。人間世界のミスユニバースなんぞ目じゃない。実際ミスユニバースもここにきて貴方に見極めてもらってるんでしょ?」
『まあな。ここ50年くらいは裏のミスコンと呼ばれておるようじゃ。』
「素敵!私一応はミスジャパンなんです。でも世界大会では負けちゃって。すこおし、胸が小さかったかな?ってくらいなんです。絶対勝てたはずなのに。」
彼女は一年間必死で練習したウォーキングを鏡の前で披露します。
『ふむ。なかなかきれいじゃの』
「でしょ?」
意気揚々と宣う彼女。
調子に乗ってそれから30分も歩き続け、鏡は飽き飽きしてきました。
『そろそろいいかの?』
「え?もう?ちぇ。もうちょっと歩きたかった。」
ミスジャパンは渋々鏡の前に立ちました。
そこには確かに綺麗な黒髪ロングの美女が一人。歩き疲れも見せず、鏡に向かってにこやかに微笑みました。
『呪文は知っとるかい?』
「そりゃ、映画で有名になりましたからね。もちろん知ってます。」
『じゃどうぞ』
コホンと咳ばらいを一つして、美女が鏡に向かい呪文を唱えます。
「かがみよ、かがみ、かがみさん。世界で一番美しいのは、だあれ?」
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