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鏡よ鏡、鏡さん
うっそうとした森の中。
世の人はシュバルツバルトと呼ぶ中世の森。この奥を抜けたところに、美しい真っ白な城がある。
その名も白鳥城。ノイシュバンシュタイン。
とは別で。
その反対側、湖をはさんだ山の中。
うっとおしいほどの針葉樹とツタに囲まれた場所に、その小屋はあります。
そこに行くにはノイシュバンシュタインの御不浄口から小舟に乗って流されていくか、泳いで渡るか、の二つの方法があります。
ところがそこへ行くための渡し船には結構な大金を積まねば乗せてくれません。
どのくらい高いって?
そりゃあなた。
年末ジャンボ宝くじの少なくとも組違い三等賞くらいは当たらないと。
にもかかわらず、毎日何人かは訪れているようです。
それも美女ばかり。
今日も地元のミスコンで優勝した美女が、帯び付きの日本円を持って渡し舟に乗せてもらったようです。
「じゃあな。ジャパンなお嬢ちゃん、グッドラック」
船頭さんが懐中電灯を彼女に渡しました。
「この道を行けばいいのね?」
美女は不安そうでしたが、仕方がありません。森につながる細くて砂利だらけのこの道は、一人で行かなければならないというおきてがあるからです。
「そうそう。終わったらすぐ戻って来いよ」
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