いかないで

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 病院に着く頃には、僕の泣き声は治まっていたけど、涙はいつまでも止まらなかった。  病室に入ると、お姉ちゃんは嬉しそうに左手を挙げて、僕を呼んだ。  その右手は、包帯でぐるぐる巻きになっている。 「で、なんだって」 「それがね、赤信号でバイクが突っ込んできて、秋絵の右肩にガシャーンって」  お父さんとお母さんの話を聞いていて、どうやらお姉ちゃんは病気でなく、けがで倒れたんだって分かった。  なんだ、「ふじのやまい」じゃなかったんだ。そう思って安心した僕は、急に体中の力が抜けて、その場で倒れてしまった。
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