第25章 秋祭りは危険な夜

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秋祭り。浴衣で待ち合わせ。 夜なので黒地に、紫とピンクの帯、裾に白い花のグラデーションにした。 髪は少しアップにし、飾りにすずらんみたいな揺れるかんざしをつけた。 藤ヶ谷くん、私を見た瞬間。 「浴衣。 彼女が浴衣 はあああ」 深いため息をつく。 そんな彼も、艶姿。 「藤ヶ谷くんも浴衣だね 似合ってる」 「浴衣が似合わなくてもいい!」 「え?」 「お前と似合いたいの!」 むきになる藤ヶ谷くん。 「百年続いた平和はないかもしれないけど 一生をかけてひとりの女を守りたいって思う。 … ありすが心底愛おしい。 会えば会うほど切なくなる。 ありすがかわいすぎて恥ずかしくなるよ」 「そ、そんなあ」 私は真っ赤になった。下を向いてしまう。 「行こう、お祭り」 手を伸ばしたらふれられるのに、藤ヶ谷くんはつないでこない。 からんころんと草履の音だけが響く。 私は時折、藤ヶ谷くんの手を見る。 綺麗な指だけど、しっかりと強いことをもう知っている。 長いだけじゃあない腕のたくましさも。 歩幅をあわせてくれる優しさ、時折見つめてくれる、しっとりとした瞳。 色んな藤ヶ谷くんを知っている。 (どうして手をつないでくれないのかな)
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