第2章 はじめてのデート

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「俺、ずっと北山さんと一緒に歩きたかった」 「…」 「駆け寄ったり話しかけたり手をつなぎたかった。あなたは俺を知らなくても俺はずっとあなたを見てたから」 「…」 「同じクラスの奴が羨ましかったな」 「…」 自販機からコトンッと落ちるお茶。 「あ」 藤ケ谷くんが続けて買ったのも同じで。 「これが一番うまいよな」 「うん」 「でも、この自販機、レベル高い。俺が好きなのばっかり」 「あ、私もこれ大好き」 「ホント?」 藤ケ谷くんの目が丸くなり、次ににこおっと目を細めて笑った。 「良かったあ」 たったこれだけのことなのに嬉しそうな藤ケ谷くんは、私のペットボトルに軽くぶつけてきた。 「かんぱーい」 「あ、かんぱーい」 釣られた私のすぐ隣で、グビグビお茶を飲む藤ケ谷くん。喉が動いている。 ぷはーっていう感じ。 私はこれを飲むのを見られるのかと思ったら意味もなくドキドキしてきた。 (コップないし) 私は両手で持って、ほんのちょっと口をつけた。 案の定見てる藤ケ谷くん。 「は、恥ずかしいからダメ」 ペシッと藤ケ谷くんの肩を叩いた。 「わっ」 藤ケ谷くんが驚いた顔をし、すぐに破顔した。 「いいじゃん。見たいんだもん」 「やだ。あっち向いてて」 「飲ましてあげよっか」 「えええ、どうやって」 「フタをコップにして」 「えー?無理がない?絶対こぼすよ」 私は背中を向けてお茶を飲んだ。 やっと少しリラックスしてきた。
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