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「ああ、赤城が羨ましいなー。クラス一緒だし、隣の席だし」
「…(隣の席だけど膝は乗らないよ、フツー)」
「あ、今度の日曜日、水族館行こうか?」
藤ケ谷くんがのぞきこんでくる。
「シャチのぬいぐるみ、見に行こ」
「だめ!」
…だめ!と言ったのは私ではない。
藤ケ谷くんの後ろにいきなり立ったジャージ姿の美人だ。
「俊哉!」
(え、俊哉って、藤ケ谷くんの下の名前…だよね)
「バスケの練習日だから!水族館なんかいかせないよ」
「わあ、マネージャー!」
ショートカットの美人は藤ケ谷くんの耳を引っ張った。
「いだだだ…痛い」
「デートなんて、百年早いわ!試合に集中しろ!」
美人は私をまっすぐ見た。
「北山ありすさんだっけ?」
「は、はい」
「こいつ、彼女出来たって、浮ついてるけど、スポーツ推薦だからね。部活の成績は絶対落とせない。
誘惑しないでよね」
「え、誘惑なんてしてないです」
思わず、ムッとする。
(なんなの、この人!)
「放課後も朝も土日も部活だから。
うちは県内屈指の強豪なの。
彼女と遊んでる暇はないよ、藤ケ谷!
あんたの友達の蟹枝草太や鰍沢東吾はともかく、あんたは推薦で大学も行くんだから、女の子とつき合うなら、社会人になってからだ!」
「やだ!」
藤ケ谷くんがマネージャーを睨んだ。
「俺、北山さんと別れないからな!
北山さんも俺と別れるな!
部活と北山さんなら、俺は北山さんをとる!」
「…」
どうしよう…
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