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「ずっと俺の彼女でいて」
そう言われた時、頷けなかったのは…
(私、藤ケ谷くんのために何もできてないから)
私はそのあと、さらに遠山先輩に呼び出された。
そして「あたしの方が、藤ケ谷の為になってる!」と言われた。
「藤ケ谷のためにも、バスケ部のためにも、高校のためにも付き合いをやめて!」と。
「すごいっすね!」
呼び出されて、黙って聞いていた私の後ろにいつの間にか赤城くんが来ていた。
「高校の名誉のために、彼氏と別れる彼女っているのかな。
第一、北山さんと別れたら、藤ケ谷がバスケに集中できて、うちの高校が総体優勝になるなんて、遠大な予想すぎやしませんか」
遠山先輩は赤城くんに怒鳴った。
「あんたは、野球部よね、野球部にバスケ部は理解できないでしょ!黙っててよ」
「俺はバスケはわかんない。でも、藤ケ谷の友達だし、同じ男だから、よくわかる」
赤城くんは私を見た。
「北山さんが彼女なら、萌えるでしょ」
「なっ…!」
慌てた私は、わたわたと手をふる。
「ないないないない!」
赤城くんは、クスッと笑う。
「もし、北山さんが俺の彼女で、俺が甲子園とか出たら、この人、俺より喜んでくれそ」
「…」
「俺が悔しい時とか苦しい時、黙ってそばにいてくれそ。
なんか、俺より俺でいてくれそ」
「…」
「ねえ、北山さん。
藤ケ谷は、役に立つ彼女が欲しいんじゃないよ」
「赤城くん…」
「ありすが欲しいんだ」
「…」
「ずっと好きだったんだ。今更文句言われてたまるか」
赤城くんのまっすぐな瞳に気圧される。
「ぶ」
赤城くん、吹き出す。
私の頭をくしゃっと撫でた。
「藤ケ谷の気持ちだからな」
くしゃくしゃくしゃくしゃ。
「わあ、やめてよ、赤城くん!」
「さらっさら!気持ちイ~」
「やーめーてー」
「いいわ、北山さんの毛並み」
「犬じゃないんだから!」
「猫でもいいな。『にゃんにゃん』って言ってみな」
「絶対言わない!」
ぎゃあぎゃあ言いながら、じゃれあう私たちを見て、遠山先輩は苛立った。
「私の方が藤ケ谷を愛してる!」
「…」
「十年間、好きなんだから!ポッと出のあんたに負けない!」
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