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「彼女にはどうやったら知華が喜ぶかって帰り道相談に乗ってもらってたんだ。ごめん。やっぱり走ってくるべきだった」
「そうだよ。こんなに待たせて……ばか」
本当は、今なら何言われても許せるくらい嬉しいのに、頬を膨らませて演技する。
「それにしたって、よくみんなこんな恥ずかしいことしたがるよ。信じられない」
「ほんと、洋太にしては頑張ったね」
思い出して笑みが漏れる。
それに洋太は不貞腐れたように言葉を返した。
「本当はレストランでプロポーズしようと思ってたのに……。知華の事引き留めようとして俺必死で。まさか自分がこんな形でプロポーズするとは思ってなかった」
でも今俺凄く幸せ、と抱き締めながら耳打ちする吐息がくすぐったい。
先程までの私の怒りや悲しみなんてものは全て、彼のその公開処刑の出来事で吹き飛んでしまった。
なんて単純。
すれ違いながら私達を祝福してくれている人達もまた、幸せに満ち溢れた表情。
どうかあなた達にも、今の私と同じくらいの幸せがありますように。
先程のあの、私を慰めてくれた白い猫にも……と彼に抱き締められながら冬の空に願った。
了
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