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今までだって幾つも喧嘩してきたけれど、ちゃんと仲直り出来てきた。
でも、今回はダメなのかな?
連絡も無く放置なんて……。
手袋を嵌めていてもかじかむ指先に吐息を吐き暖める。
不意に足元で何かがもぞりと動いた。
「きゃっ」
思わず足を竦めて持ち上げると子猫が一匹。
ナオーン。
私を見上げるその眼差し……可愛い。
「……何だ、猫か。びっくり。なあに?お前も一人?私も一人になっちゃったみたい。ほら、おいで」
持ち上げると抵抗もせずに受け入れる。
まるで羽が生えているかのように軽い。
それに、何て暖かい。
「寒いよね。雪も降ってるし。お前お母さんは?」
ナオーン。
居るとも居ないとも受け取れる甘い鳴き声で返事をする。
「お前、うちに来る?ペットOKのアパートだから来たかったら来ても良いよ。どうせもう……私も一人ぼっちだし。ねえ?私の事慰めてくれる?」
すると突然、するりと抜け出し逃げてしまった白い子猫。
その駆けていく先には同じく白い大きな猫が居た。
「……何だ。お母さん居たのね、良かった。……じゃあ、私だけか、一人なのは」
ははっと小さく笑う。
笑った途端に頬に生暖かい液体が伝った。
え?
それを手に取り気が付いた。
それが涙だったと。
その瞬間決壊してしまった。
涙を貯めることの出来ない壊れたダム。
遅れるとか来ないとかその一言すら面倒と思うほど私の事を嫌いになってしまったのかな。
もう、私達はダメなのだろうか……。
雪をほろって漸く立ち上がると、私は地下鉄の駅に向かって歩き出した。
周りの人達の足取りの何と軽い事か。
数組のカップルに追い抜かされて、私は改札口へと漸く辿り着く。
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