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吉沢の新しい席を指差して、指図した森下。
かなりイラついていたようで、森下の怒号は隣の部にまで聞こえていたようだ。
『うわっ…新人君、早速怒鳴られてるよ。』
『森下君は仕事出来ない奴、とことん嫌うからな…』
『誰でも森下みたいに仕事出来るとか思ったら大間違いだけどな。』
『吉沢君、イケメンで高身長だから森下さん…僻んでるんじゃない?』
『まぁ、イケメンは森下に洗練されればいいんじゃないか?』
---などと、好き放題言われる始末。
勿論、その声は森下には聞こえているがいちいち突っかかっても敵を増やすだけだし、そんな馬鹿を相手にしている森下ではない。
一方、吉沢はというと……自分の現状を理解できておらず、周りの小言に耳を傾ける余裕がなかった。
吉沢は、こんなの初めてだ…と言わんばかりに立ち尽くしていたのだ。
---今まで、甘やかされて育って来た吉沢。…自分の顔にはそこそこ自信はあったし、ニコニコと笑顔を振りまいているだけで世の中を上手く渡り歩いてきた。
運動神経はそこそこ良いし、頭はさほど悪くはない。……しかし、要領が悪く小さなミスや失敗を繰り返すことが多かった。
けれど先輩には媚を売り、後輩にはとことん優しくすることで何とか今までやって来たのだ。
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