第1章

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それが、この人には全く通用しない……。 その事に吉沢は驚きを隠せず、同時にどうしたらこの人に気に入ってもらえるのだろうと考えていた。 「何、ボーッと突っ立ってんだ。早く座れ。」 そんな事を考えているとは露知らず、森下は突っ立ったまま動かないでいた吉沢に声を掛けた。 「…っ、…すみません。」 慌てて吉沢は、指し示されていた席へと向かって着席した。 「今日からここがお前の仕事場になる。ここの一帯…デスクが繋がってるだろ?ここは全員、同じイベント企画部となる。」 吉沢はとりあえず自分の机の周りを見渡し、「はい。」と返事をした。 「俺の席はあそこだ。その向かい側の席がイベント企画部長の真田さんだ。他は順に……」 と、席順にスラスラ名前を言っていく森下だが……そんな一瞬で人の名前を吉沢が覚えられるはずもなく。 「あ、あの…そんなにすぐ言われても誰が誰だか一致しないというか……」 その一言を言った途端、森下の顔がさらに歪んだ。……これだから馬鹿は、という顔を曝け出している。 「自分で挨拶に行って覚えればいいだろ。…ここの部は基本的に優しい方ばかりだからな。俺が嫌なら別のやつに聞けばいいだろ?俺もその方が仕事が捗って助かる。」
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