第1章

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「いただきます。」 その言葉をポツリと呟くと、美味しそうに弁当を食べ始める森下。 『森下さん、今日も手作り弁当だ。』 『彼女さんに作ってもらってるんだろうね、普段全然笑わないのに…食べてる時だけ幸せそう。』 『いいなぁ、彼女さんはあの顔をいつでも見れるんだね。』 ーーーそう、原因はここにある。 毎日欠かさず持ってくる弁当を、まさかあの森下が作っているとは思ってもみない女子たちが「あれは彼女の手作り弁当だ」やら、「もしかして、指輪をしてないだけで愛妻弁当なのでは」などと噂したために、女性社員たちすら近寄らない現象に陥ったのである。 そんな変な噂により、会社での森下は一匹狼状態となっていたが、彼は元々人と関わることが得意でも好きでもないため、そこまで苦労はしていなかった。 ただ、自分の好きな仕事を自由にできる環境に満足していたのだ。 しかし、そんな人付き合いが苦手な森下に会社側は容赦もない要求をしてきたのだ。 「森下、お前に今度の新入社員の教育係を頼みたい。」 「…!?……お、俺がですか!?」 「そうだ。森下は将来に期待できる若手だし、お前から学ぶ事も多いだろう。だから、新入社員にも身近でお前の凄さを感じてもらいたいんだ。」
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